
焼き菓子の歴史 〜世界と日本をつなぐ香ばしきスイーツの物語〜
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オーブンから立ち上る甘く香ばしい香り。ふっくらと焼き上がったお菓子を頬張るときの幸福感は、子どもから大人まで世界中の人々に共通するものです。
「焼き菓子」と一口に言っても、その種類や歴史、世界での広がり方はとても多彩で奥深いものがあります。
この記事では、お菓子作りを愛する方達に向けて、その種類や歴史、世界のトレンドについて具体的に解説していきます。
焼き菓子の種類:定番から進化系まで
焼き菓子とは、オーブンなどの熱源で焼き上げて作るお菓子の総称です。パティスリーやカフェ、おうち時間のお供としても定番のスイーツたちは、ジャンルや製法によって分類されます。
1. バター系焼き菓子
フィナンシェ
アーモンドプードルと焦がしバターの香りが特徴。金塊型の小さな焼き菓子で、フランス・パリの金融街が起源。
マドレーヌ
貝殻型のふっくらした焼き菓子。レモンの香りやはちみつを効かせるなど、アレンジが豊富。
パウンドケーキ
バター・砂糖・卵・小麦粉を同量ずつ使ったのが名前の由来。しっとり感が命。
2. ビスケット・クッキー類
クッキー(アメリカ系)
外はサクッと、中はややしっとり。チョコチップやナッツを混ぜるアレンジが豊富。
ビスケット(イギリス系)
軽くて崩れやすく、紅茶と一緒に食べられることが多い。
サブレ
フランス発祥。バターの風味が濃厚で、口どけが良い。
3. メレンゲ・スフレ系
ダックワーズ
メレンゲとアーモンドを使った軽い食感の焼き菓子。クリームを挟んで仕上げる。
スフレチーズケーキ
湯煎焼きでふわっと軽やか。日本発の進化系チーズケーキとも言われます。
4. タルト・パイ系
フルーツタルト
クッキー生地にアーモンドクリームと季節の果物を乗せて焼く華やか系。
アップルパイ
パイ生地に煮たりんごを詰めて焼く、世界中で愛される定番。
焼き菓子の歴史:家庭と宗教、そして芸術の融合
焼き菓子の起源は、古代エジプトやローマ時代にまでさかのぼります。当時は小麦粉と水、果物や蜂蜜を練って焼いた素朴な菓子が存在しました。これが、宗教儀式や祭礼などの供物としても使われるようになり、やがて装飾やバター、砂糖を加えた「お菓子」へと発展していきます。
中世ヨーロッパ:修道院が担った製菓文化
中世のヨーロッパでは、多くの焼き菓子が修道院の中で作られていました。特にフランスやイタリアでは、修道女たちがアーモンドやドライフルーツを使った焼き菓子を生み出し、巡礼者に振る舞っていたのです。
ここで重要な役割を果たしたのが「オーブンの普及」と「砂糖の流通」。十字軍遠征や大航海時代を経て、アジアから砂糖がヨーロッパに入ってきたことで、お菓子作りが一般化し、庶民の家庭にも広がりました。
日本での焼き菓子文化のはじまり
日本では、江戸時代にポルトガルから伝わった「カステラ」が焼き菓子文化の始まりとされます。明治時代に入ってからは洋菓子店が登場し、バターやオーブンを用いた本格的な焼き菓子が一般に普及。
戦後はアメリカの影響を受け、クッキーやマフィンが家庭に浸透。1980年代以降は、フランス菓子の専門店が登場し、パティシエ文化が根づき始めました。
世界の志向:進化する焼き菓子文化と健康への配慮
世界中の焼き菓子文化は、今まさに「健康志向」と「多様性」の波にさらされています。
グルテンフリー・低糖質の台頭
欧米を中心に、グルテンアレルギーや糖質制限ダイエットの広がりから、米粉やアーモンドフラワー、天然甘味料を使った焼き菓子が注目されています。
日本でも、白砂糖を使わずオーガニックシュガーを使ったり、豆腐やおから、甘酒を取り入れたレシピが人気です。
ヴィーガン・プラントベース
乳製品や卵を使わないヴィーガン焼き菓子は、環境負荷の低減にもつながるとして急増中。バターの代わりにココナッツオイルやオーツミルクを使用するなど、レシピの幅も広がっています。
アートとしての焼き菓子
近年はSNS映えを意識した、ビジュアルに凝った焼き菓子も人気。フラワークッキー、アイシングアート、宝石のような琥珀糖風マドレーヌなど、焼き菓子は“目で楽しむ”ものにも進化しています。
まとめ:焼き菓子の「今」を、あなたのキッチンで楽しもう
焼き菓子は、長い歴史と多彩な文化背景を持つスイーツです。
修道院から家庭のキッチン、そしてインスタグラムのフィードへと、時代に合わせて形を変えてきました。
現代の焼き菓子は、美味しさだけでなく、健康や環境への配慮、そして個性までもが詰まった存在。作る人、食べる人、贈る人の想いが交差する“香ばしいコミュニケーション”です。
手作り派も、お店派も、ぜひ今日から「焼き菓子」の魅力をもっと深く楽しんでみませんか?